2016年12月11日

ギコ鎮守府のぶらっくまーけっと(前編)

ショウセツバン・ギコツンジュウフ

小説(前).png


〜あらすじ〜
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秋イベE2で早くもやる気を失ったギコ提督は
おしゃべりピンクが呼びだした
女神さまのひと睨みにより
大いなる汗をかいて震えた
その直後
頭にソフトクリームをこぼしたかのような
姉妹の艦娘が現れて
不幸にも提督は
連れ去られてしまった……
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『発令!艦隊作戦第三法』
ーぶらっくまーけっと(前編)ー



提督はソフトクリーム姉妹に両脇から抱えられ、どこかへ強制的に連行されていた。 これからの自分の未来に不安を覚えながら、姉妹の行く先に恐怖した。 震える口から疑問がこぼれた。

「こっ……これからどこに連れて行かれるの……?」

姉のソフトクリームが口を開いた。

「ブラックマーケットです、提督。 私たちも詳しくは知らないのですが、提督をそこへお連れしないと……」

提督は聞き返してみた。

「おつれしないと?」

買ったばかりのソフトクリームを落としてしまったかのような顔で、姉のソフトクリームは答えた。

「私たちが夕食に出ます」

提督はテレフォンショッピングのことを思い出していた。 ご覧ください、何でも切れます。 なぜ包丁には穴が開いているのだろう? きっと切れやすくなる理由があるのだ。 まな板まで切るつもりだろうか? そういえばくっつき難くなると聞いたことがあるような、もしくは鮮度をーー



考え事をしているうちに、ある部屋の前に連れてこられた。 鎮守府の奥の奥にある部屋……ネームプレートには“びっぐ川定"、その下に“☆アイテムゃ☆”とあった。 風紀が乱れている、と提督は思った。

「提督、ここがブラックマーケットです。 エセ笑顔のはねペンと、ピンクの悪魔は中にいます。 私たちは戻りますが、提督はちゃんと部屋に入ってくださいね!」

ソフトクリーム妹が怒り気味に釘をさした。 提督は考えた。 部屋に足を踏み入れるのは怖いが、さもなくばソフトクリーム姉妹がテレフォンショッピング。 グロい上に可哀想なので、提督として入らないわけには行くまい……。



部屋に入るのを躊躇っているうちに去ってしまった、二人のソフトクリームの影に寂しさを感じつつ、目の前の扉にふと目をやった。

「こんなときにドラム缶があれば、燃料を満タンにしてこの部屋の前に置いておけるのに……そうすれば中の二人は出れなくなって、任務はクリアし放題だしアイテムはタダで買い放題、あとは深海棲艦に罪をなすりつけて……」

鎮守府の色というものは提督によって決まる。 風紀の乱れや殺伐とした雰囲気、提督を軽んじる風潮もなにもかも提督が自ら作り上げたものであった。

自業にして自得、提督は覚悟を決めた。

(コンコンコン)

「こ、こここんにちはおじゃまします、ぎこです」

「あら、提督ですか、どうぞ」

柔らかな声に迎えられて扉を開けると、いつもと同じ笑顔の羽ペンが机に座っていた。 傍には同じように笑顔で迎えるピンクの悪魔。 部屋に入る前から51cmの砲塔で狙われているかのようなプレッシャーを感じていた提督だったが、二人の顔を見るやいなや、何もかもが杞憂であったと思い直した。

「それで提督、どのようなご用件で?」

ホッとする提督にピンクの悪魔が笑顔で尋ねる。 と同時に扉に向かい、部屋の鍵をガチャリと閉めた。

「よくわかんないんだけど、龍田さん……じゃなくて不幸しま」

提督はぎくりとして、言葉を探した。

「あの……鍵をかけたので……? なぜなので……?」

羽ペンは笑顔で提督を見ていた。 ピンクの悪魔も笑顔で提督を見ていた。 提督は笑顔で大いなる汗をかき続けていた。

「提督、よく聞いてくださいね」

提督は羽ペンの声に愉しさが乗ったことを感じた。 今すぐここを逃げ出してほっぽちゃんと一緒にタコヤキを食べに行きたい気持ちになった。

羽ペンは眼鏡に手をやり、冷静に言葉を続けた。

「これから、私たちは3つのものを提督にお見せします。 どれも正規のアイテムではなく、価格も世界水準をゆうに超えています。 提督はそれを購入することも、しないこともできます」

提督は相手が本気である事を悟った。 これは冗談でもなんでもない。 相手の信用と自分の未来のため、提督は羽ペンの言ったことを確認するように小さく繰り返してみせた。

「アイテム3つ、買っても買わなくてもいい……」

「ただし」

ピンクの悪魔が口を開いた。

「3つのうち、ひとつも買わないでここを出る場合、マーケットのキャンセル料として1500バケツ頂きます!」

提督は声を上げて自分の正気を励ました。

「せんごゃくばけつ!? せんご……ほん……ほんとにまじ??」

徹夜明けで床に入ろうとする者に冷水を浴びせるような笑顔で、ピンクの悪魔は続けて言った。

「もちろんです! バケツが1500もあれば私は毎日好きなだけ寝れますから! ねっ、提督……? キラキラっ! うェっひふぇぇ」

ふかふかベッドを想像してヨダレを垂らす悪魔を尻目に、提督は今回のやりとりがとんでもないものであると察した。 世界水準の価格とは、てっきり三越レベルのなにかをごにょごにょする事だと想像していた。 それがまさか1500バケツとは。 3つのアイテムの価格を見ないまま帰りたい。 しかし1500バケツ……。

驚きに思考が鈍らされる中、羽ペンはそんな提督の身を気遣った。

「大丈夫ですか? 私たちの言っている事がわかりますか?」

「だ、大丈夫……龍田さんに掛かれば何も不思議じゃないし、1500バケツなんてギコ鎮にとってははしたバケツだし……」

厳しい顔を崩すまいとしながら、提督は羽ペンの言葉を待った。 羽ペンは提督の狼狽を和らげるために、今まで以上に優しく言葉を放った。

「もちろんこのことは他言無用です。 万が一にも無いとは思いますが、大本営や他の鎮守府に情報が洩れた場合は……」

提督は恐怖のデジャヴを予感していた。

「もれたばあいは……?」

秋刀魚のような声で、羽ペンが答えた。

「私たちが夕食になります。 勿論、提督も」

提督はテレフォンショッピングのことを思い出していた。 あの刃物の穴はきっと間になにかを通すのだ。 まさか羽ペンを通すのだろうか? しかし羽ペンを切ったらインクが洩れる、ピンクの悪魔はカッターをコピーするかもしれない、提督を切るとなれば当然、赤だろう…………空はあんなに青いのに。

「では早速、一つ目の商品を紹介しますね!」

ピンクの悪魔はウキウキしている。 眼鏡の羽ペンはニヨニヨしている。 提督の心臓はドンドコドンドコ。


-後半へつづく-
 
posted by ギコ at 16:50| Comment(6) | TrackBack(0) | 艦これ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする